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認知症その診断、予防、改善アマニセミナー 育脳から認知症予防まで

 私たちは、1999年末から「物忘れ外来」を始めています。これは初めて認知症の薬であるアリセプトが登場した年ですが、それをきっかけとしてこの外来を始めました。その取り組みと経験から、本日はお話しをします。。

東京医科大学病院 高齢診療科 准教授 櫻井博文先生

認知症とはどんな病気か

「健康寿命」と「平均寿命」の差は10年

 わが国では、世界的なレベルで見ても非常に平均寿命が延長されています。しかし、問題は、健康で長生きができる「健康寿命」と「平均寿命」の差が10年くらいあることです。
 この10年間にどうなるかというと、生活障害を抱えて、場合によっては介護が必要な状態で生活することになります。 この生活障害から要介護にまでなる原因は、まず一番大きいのは脳血管障害つまり脳卒中です。次が認知症です。
 病院のある新宿区の介護認定をする会議でも、この脳血管障害と認知症、それに骨関節の疾患が、最も重要な問題になります。ちなみに骨折については骨粗鬆症が原因になっていると思われます。
 この人生の最後の10年を健康に過ごすためには、認知症は大きな問題です。なりたくない病気として、男女ともに認知症と脳卒中が挙がっているのも当然のことでしょう。

記憶や遂行機能が障害される

 認知症の定義としては、もともと正常な人が、何らかの病気で記憶や遂行機能が障害されて戻らず、自立した生活が困難になった状態、とされています。
 記憶の障害というのは物忘れのことです。遂行機能や実行機能の障害というのは、例えば、料理の手順が分からなくなったり、風呂に入る手順が分からなくなる、といったことです。
 認知症の診断のためには、まず問診をします。 最初の症状の訴えとして一番多いのは、同じことを何度も尋ねたり、物の名前が出てこないといった「記憶障害」です。この症状があるかどうかを問診します。 それから、物のしまい忘れや物をなくす「生活障害」、以前に興味のあったことに関心が薄くなる「性格変化」の有無も問診します。

認知症の物忘れは「全体」が抜け落ちる

 けれども、こうしたことは誰にでもあることだと思います。 私自身も、財布をどこに置いたのか忘れてしまうこともありますし、テレビを見ていて俳優の名前が出てこないなどということがよくあります。以前はスポーツをしていたのが、最近は関心が薄くなって運動不足になっていたりもします。
 このように誰にでもあることなので、これを最初の症状としてはなかなか捉えられないこともあります。 しかし、年相応の物忘れと認知症の物忘れにはいくつか違いがあります。 認知症の物忘れの場合には、1番目に全体をすっぽりと忘れてしまうということがあります。
 例えば、私が1週間前に結婚式に出たとします。同じテーブルにいた人をすべて憶えていることはなかなかできないものます。ところが、1週間前に結婚式に出たということそのものを忘れてしまう場合には、これはまず病気であるといえます。 よく、認知症ではご飯を食べたことを忘れるといいますが、これも同じことです。年相応のもの忘れでは、おかずの1品くらいを忘れることがありますが、言われれば思い出します。しかし、認知症の場合には言われても分からず、全体が抜け落ちてしまうのです。

記憶力の低下が認識できない

 もう1つ、記憶力が低下したことを自分で認識できないということも、認知症の物忘れの特徴です。 私たちも、記憶力が落ちてくると自覚すればメモを取るなどしますが、記憶力の低下を認識していないため、そうしたこともできなくなってしまいます。
 こんなこともしばしばあります。ご家族が患者さんを連れて来られて、私が患者さんに問診を始めます。「最近、物忘れが多くて困っていませんか」と聞くと、「いや特にありません」と患者さんが言います。患者さん本人は困っていませんが、ご家族は、何回も同じことを聞かれるなどして困っているのです。 難しい言葉で言いますと、患者さんに「病識」がないということになります。

認知症の物忘れは進行が早い

 それから、認知症の物忘れの特徴として進行が早いことも挙げられます。 年相応の物忘れに比べると、半年や1年で明らかに進行します。 ただし、年相応なのか病気なのか中間的な場合もあり、判断が難しいこともあります。そうした時には、私たちのような専門の外来を受診していただきたいと思います。

アルツハイマー病は最も多い認知症

 認知症の種類にはいくつかありますが、中でも「アルツハイマー病」が6割くらいを占め、最も多いものとなっています。 つい先ほどのことを忘れたり、今いる場所が分からないなど記憶の障害が主な症状です。 アルツハイマー病については、後ほどもう少し詳しく説明します。

脳梗塞などで起こる血管性認知症

 次に多いのは「血管性認知症」で、おもに脳梗塞です。最近ではアルツハイマー病と脳梗塞を合併している患者さんが多く見られます。 私どものアルツハイマー病の患者さんは、平均年齢が80歳に近く、高血圧などもありますと、2〜3個の脳梗塞を持っている患者さんはとても多いです。 脳梗塞によって、ぼんやりとしていたり、血管障害が起きた場所によって、手足の麻痺や言語のもつれがあったりします。

幻視とパーキンソン症状が特徴のレビー小体型認知症

 そして、最近注目されている認知症が「レビー小体型認知症」で、パーキンソン病の“兄弟”のような病気です。 この病気は物忘れだけではなく、幻覚、幻視、パーキンソン症状などが目立ちます。 幻視というのは、見えない物が見えるという症状です。例えば、昼間に家族と食事をしている時、しっかりしている時に「あそこでイヌが遊んでいる」とか「人が通っている」といったまざまざとした幻視を見ます。特に何もしていない時に手が震えたり、小さな歩幅になるなどの症状があると、パーキンソン症状が疑われます。

判断が難しければ専門外来へ

 数は少ないですが、認知症の種類として「前頭葉側頭葉変性症」という病気があります。よく、高速道路を逆走してしまう人などは、この病気が疑われます。隣の家の畑のものでも勝手に持ってきたり、スーパーで商品をそのまま持って帰ろうとして、呼び止められても平気な顔をしているといった症状が見られることもあります。その他、アルコールによるもの、ヤコブ病、正常圧水頭症などもあります。
 このように、認知症になる原因はさまざまで、他にもたくさんあります。どういう病気かを判断するためには、CTやMRIといった画像による診断が必要ですし、症状が典型的でないような場合には、やはり専門外来を一度受診していただきたいと思います。最初の診断を間違えると、その後の治療も誤ることがありますので、大事なことだと思います。

メンタルテストで認知症を調べる

 認知症を調べる「ミニメンタルテスト」があります。日本では「長谷川式スコア」もよく使われます。ミニメンタルテストでは、日時や場所を認識する「見当識」、物の名前を覚える「短期記憶」、「計算」「図形の模写」といった項目があります。

 

アルツハイマー病を知る

東京医科大学病院 高齢診療科 准教授 櫻井博文先生
脳の神経組織に変化が起こる

 認知症の約6割を占めるアルツハイマー病はどのような病気なのでしょうか。
 アルツハイマー病の始まりは、脳の中に「βアミロイド」というタンパク質が蓄積して「老人斑」という染みのようなものを形成します。
 次は「リン酸化タウタンパク」という物質によって「神経原線維変化」という変化が出てきます。
 この2つの変化が脳にダメージを与えて、神経細胞が脱落して、脳が萎縮していきます。
 最初は脳全体に起きるのではなく「海馬」という新しい記憶をつかさどる部分に起こってきます。海馬は側頭葉の内側にありますが、それが側頭葉、頭頂葉に広がり、やがて脳全体に拡大します。
 海馬から病変が始まるために、記憶障害つまり物忘れが起こってくるわけです。そして、頭頂葉は空間的な認識をつかさどる部分なので、やがて図形模写のようなことができなくなったり、慣れている場所で道に迷ったり、遠くに行ってしまって帰って来られなくなったりします。
 アルツハイマー病の患者さんの脳のMRI写真を見ますと、健常な同年代の高齢者に比べて、海馬が非常に縮んでいることが分かります。

脳の病的な変化は15年以上前から

 こうした老人斑などの変化はどのくらい前から起きているでしょうか。実は、15〜20年前から起きているのです。そうしますと70歳で、物忘れを主訴として受診した患者さんであれば、頭に起こる老人斑は、50歳代から起きていることになります。
 この根本的な原因となる、βアミロイドを除去したり、神経原線維変化を起こさなくしたりする薬を、現在、世界中で開発をしていますが、まだできていません。それは、こうした変化が数年で起こる変化ではなく15〜20年という長い時間の中で起こるため、臨床試験ができにくいことが理由です。 しかし、私たちも日本の40カ所ほどで共同研究を進めています。また、アミロイドはPETという画像診断ができるようになりました。リン酸化タウタンパクも、日本が世界にさきがけて画像化できると発表されています。

若い頃からの認知症への備え

 ただし、これは日常的な患者さんに対する検査ではなく、あくまでも研究施設でやっている検査です。したがって、一般の患者さんに公開することはありません。また、こうした初期からの変化についての有効な治療法もありません。
 しかし、やはり若い頃からしっかりと生活習慣病を予防する食生活や運動を心がけることは大事です。それから私個人的には、若い頃から「いい人間関係を構築する」ことは、将来の認知症への備えとしてとても重要なことだと思っています。友人でも家族でも、いい関係があれば、いざ認知症になってしまってもそれが支えになるからです。

記憶力の低下から始まる

 アルツハイマー病の経過と主な症状を見ていきましょう。
 軽度の障害は記憶力の低下から始まります。そして現在の年月日や季節が分からなくなるなど時間の感覚が障害されます。時間の経過とともに中等度に進行して、薬も早い段階で飲めなくなりますので、家族に薬のチェックもしていただきます。
 独居の高齢者は現在増えていて、私の病院のある新宿地区でも3人に1人は一人暮らしですので、介護サポートなども早めに必要になります。それから、この頃に、興奮や妄想、徘徊といった、かつては精神症状や問題行動といわれていた、家族を非常に困らせる症状が起こってきます。
 さらに高度に進行してくると、着替え、入浴、散歩など自分の身の回りのことができなくなり、介護が必要になります。

認知症の2つの医療目標

 こうした点から、認知症の医療目標は2つあります。1つは、着替え、入浴、散歩などの日常生活が、1日でも長く自分できることです。2つめは、問題行動や精神症状や徘徊などがなく、自宅でおだやかに過ごせることです。この2つが大きく崩れてくると、施設入所ということになります。

患者さんの家族も支える

 私たちは、家族に対しても介護負担の部分で向き合います。 例えば「興奮することがあって困る」という家族の話しがあります。なぜ患者さんが興奮するのか、その時の事情を家族に聞いてみると「何回も同じことを聞くので、つい怒鳴ってしまう」時であったりします。
 あるいは、熱心な家族の方だと、できなくなってしまったことを何とかやらせようとして、繰り返し注意をしてしまい、患者さんもイライラすることもあります。
 また、症状を改善させようとして、患者さんに計算をさせたり日記を書かせたりなどを無理にさせてしまうことも、患者さんの興奮やイライラの原因になることがあります。こういうことは楽しくやれなければいけません。 ご家族にとっては初めてのことで、戸惑うことも多いのですが、病気に対する理解や対応をどうするか、私たちが指導することも大事だと思っています。また、ソーシャルワーカーから成年後見制度についても、説明することがあります。家族が不安でイライラした状態では、患者さんも落ち着いた状態ではいられません。まずは家族が知識をもって対応できる状況を作ることが、患者さんの経過にも影響をします。

オメガ-3系脂肪酸摂取は認知症を防ぐ

東京医科大学病院 高齢診療科 准教授 櫻井博文先生
いい食事や知的活動が予防になる

 認知症にはそれを防ぐ因子というものがあります。食事としては、今回のテーマでありますオメガ-3系脂肪酸があげられます。オメガ3系脂肪酸を摂取することが、認知症を防ぐ因子となっているのです。
 また、薬物療法や、もともと高い知能があれば発症を遅らせることができます。 高い知能があるということは、神経細胞に強固なつながりがあるので、老人斑による障害にもかなり抵抗ができるからです。
 活動的で知的刺激のある生活も防ぐ因子の1つで、趣味などがなくても運動をすることは認知症予防に効果があります。これは足腰の筋力アップのためにもいいことです。
 悪化させる因子としては、生活習慣病が大きなものとなります。
加齢も認知症悪化の因子で、加齢によって少しずつ神経細胞が壊されます。社会との接点の減少や遺伝的要因も悪化の因子となります。

料理の知的刺激は認知症予防に効果あり

 知的刺激の効果がある認知症予防プログラムというものがあります。
例えば、グループでミニコミ誌を作ったり、料理を作ったりします。この料理というのはとても手順が多いので、知的刺激があり、認知症予防に効果があるのです。
 ですから認知症になると女性の場合には、まず料理ができなくなることが多く見られます。あるいはメニューが乏しくなります。料理は、メニューに応じて材料を考えるところから始まり、それを買いに行き、調理して、盛りつけをするというように、遂行機能が重要です。ただし、認知症が進んでしまっている方でも、娘さんと一緒に「これ切って」「これ盛りつけて」というふうにすると、それはできます。ところがすべてを自分で遂行することが苦手なのです。
 患者さんのリハビリも必要です。計算・パズル・絵画・散歩・体操などを、3カ月間やった患者さんは、やっていない患者さんに比べると、点数がよかったという結果が出ます。ただしこれも、嫌々やるのではなく楽しくやることが重要です。

魚を食べると認知症になりにくい

 シカゴで行われた調査で、魚を食べる人と食べない人の認知症のなりやすさを比較したものがあります。
魚をまったく食べない人の認知症のなりやすさを1とすると、週2回以上食べる人の認知症のなりやすさは0.4となりますから、半分以下になることが分かります。 これは日本でも同様の報告があります。島根県で行われた調査で、長谷川式スコアを使って調べると、魚介類、タンパク質、オメガ-3系脂肪酸を摂取する人は点数が高かったことからも、認知症の改善に食事が大きく関わっていることが分かります。

適切な認知症治療

薬をじょうずに使う

 現在、認知症に対する薬は、4種類あります。
 以前は1999年に登場した「アリセプト」だけでしたが、2011年に3種類が出ました。「アリセプト」もいい薬ですが、合わない方もいらしたので、ほかの薬に切り替えることができるようになりました。
 このうち「メマンチン」は精神安定効果もあります。アリセプトは、意欲がない、元気のない、ぼんやりしている方に効果があります。一方で、徘徊や怒鳴ったりが多い方には「レミニール」を処方して、後からメマンチンを併用することもあります。「イクセロンパッチ」は、外用薬ですので確認しやすく、皮膚ケアをすることでうまく使うことができます。

認知症と高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理

 私どもは「高齢診療科」ですので、診療する患者さんは平均年齢が76歳です。こうした患者さんたちは、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病がとても多く合併しているのが見られます。これらの病気が2つ以上ある患者さんとない患者さんを比べると、ある患者さんは、認知症になってからの進行が早いです。ですから、認知症になってしまってからでも、高血圧、糖尿病、脂質異常症をきちんと管理することが大切です。中年期の高血圧や脂質異常症が、老年期のアルツハイマー病に影響することも研究で分かっています。
 これは先ほどご説明したように、脳の中での変化は10年以上前から起きていることを考えると、理解できることです。
 また、最近では糖尿病のある人は、ない人に比べて2〜4倍も認知症特にアルツハイマー病になりやすことが分かっています。

認知症改善の経済効果は大きい

 認知症の症状改善による経済効果ということも、いわれています。
 400万人の認知症患者のうち200万人に、18カ月の症状改善があると、1.2兆円の経済効果があるという試算があります。 私たちも、現在いろいろな研究をしていますが、根本的な治療薬が開発されるにはもう少し時間がかかります。 しかし、さまざまな薬をうまく使い、介護する家族を介護保険によってうまくサポートし、また、生活習慣病をうまく管理することで、半年、1年と発症を遅らせることができれば、相当の経済効果も期待できると思います。

関係者の連携で認知症に取り組む

 2025年には、高齢者人口はピークを迎えると推定されています。 私どもは、その時までに構築したいと考えていることがあります。それは、私どもの専門外来とかかりつけの医師と家族が連携する態勢を作りたいのです。専門の外来だけではとても認知症に対応しきれません。ですから、私ども専門外来で診断をしたら、かかりつけの医師にお願いをして、毎月の薬を出していただきます。そして半年に1回程度は専門外来にも来ていただき、何か問題があった時にも、もちろん専門外来に来ていただくわけです。
 もう1つは、介護保険のもとに、地域の介護保険関係機関でのサポートもさらに充実できればと考えております。

 今日は、認知症についての情報、認知症になってもできるだけおだやかに過ごす方法、そして特に生活習慣病について、現時点でできる対応をご説明しました。

先生プロフィール

東京医科大学病院 高齢診療科 准教授 櫻井博文先生
桜井 博文 先生

■東京医科大学病院 高齢診療科 准教授

神奈川県出身。
高齢診療科では、1999年11月の開設時より物忘れ外来を担当。2005年4月より認知症家族への介護者教室も毎月開催。
2003年より開催された 在宅認知症患者対策ケアネットワークを担当。地域と認知症ケアのネットワーク構築を目指し、新宿、杉並、中野医師会との連携を進めている。
2005年より新宿区保健所で毎月の物忘れ相談を担当。
行政(新宿区)との連携も進めている。




【経歴】
1982年 東京医科大学卒業
1986年 東京医科大学 大学院 老年病学専攻卒業
1984年9月〜1986年3月 東京都老人総合研究所臨床病理部で神経病理研究
1989年4月 医学博士
1991年6月 東京医科大学 老年病学教室 助手
1997年4月 東京医科大学 老年病学教室 講師
2011年1月 東京医科大学 老年病学教室 准教授
2012年12月 東京医科大学病院 総合相談・支援センター副センター長併任
2013年7月 東京医科大学高齢総合医学講座(高齢診療科)准教授


【資格】 【専門分野】
日本老年医学会専門医・指導医・代議員 認知症,脳血管障害,老年医学
日本認知症学会専門医・指導医・評議員  
日本神経学会専門医・指導医  
日本脳卒中学会専門医  
日本内科学会認定医  


【主な研究内容】
認知症、特に生活習慣病(糖尿病、脂質異常症)との関連など

【所属学会】
日本内科学会、日本老年医学会、日本認知症学会、日本神経学会、
日本脳卒中学会、日本神経病理学会、日本リハビリテーション医学会